検定対策コラム
4級レベルと直説法近過去
- 白崎容子
- 元慶応義塾大学文学部教授Le Ali 21号
今回は4級で出題される過去時制《直説法近過去》にスポットをあてましょう。avere と essere の活用形はもう知っているので、新たに登場するのは過去分詞(以下pp.と略記)だけ。prendere ⇒ preso など -ere 動詞には不規則形が多いですが、直説法現在のように活用形をひとつひとつ覚える必要はないので、ちょっとラクな気がしますね。
でも、助動詞が avere になるか essere になるかというポイントには、心してかからなくてはなりません。直接目的語(直接補語)を必要とする他動詞であれば《avere+pp.》、再帰動詞なら《essere+pp.》と決まっているので迷わなくてすみますが、一筋縄でいかないのは自動詞。andare, stare などは《essere+pp.》だけれど、 dormire「眠る」, viaggiare「旅する」のように、 avere を使う自動詞も少なくないからです。それどころか、使い方によって他動詞にも自動詞にもなるものまであります。
【1】Domenica Mario è venuto a casa mia con le loro figlie e ______________ il pomeriggio insieme.
- a) abbiamo passato
- b) siamo passato
- c) abbiamo passati
- d) siamo passati
動詞 passare には、「(場所を)通過する」(自動詞)だけでなく、「(時間を)過ごす」(他動詞)の意味もあります。出題された問題は、「一緒に午後を過ごした」ということなので、正解は a) abbiamo passato。d) siamo passatiと答えた方の数が、なんと正解者を上回りました!「通過する」の場合には Siamo passati per il centro.「私たちは中心街を通った」のように前置詞 per を伴うこともありますが、 L’autobus è già passato.「バスはもう通過した」のように前置詞がない場合もあります。文脈から、意味をしっかりつかむことが肝心ですね。同じ仲間の動詞として finire 「(ことが)終わる」(自動詞)、「(人がことを)終える」(他動詞)、 cominciare「(ことが)始まる」(自動詞)、「(人がことを)始める」(他動詞)などがあります。 avereとessereの使い分けは、さらに上のレベルのさまざまな過去時制にも共通です。この段階でマスターしておきましょう。
もうひとつ、〈近過去〉と〈半過去〉の使い分けも、大事なポイントです。これはイタリア語の森に深く分け入って、イタリア語がどういうものなのかかなりわかった、もうコワいものはない...と感じられるようになった後でも、なお悩ましい問題ですが、とりあえず基本的な法則をこの段階でしっかり抑えておきましょう。
【2】Per tanti anni Michela ________ un corso di danza classica. Poi all’improvviso ha deciso di smettere.
- a) frequenta
- b) frequenterà
- c) frequentava
- d) ha frequentato
「何年ものあいだミケーラはクラシックバレエ教室に通った。そのあと突然やめる決心をした」日本語の発想では「長年、通っていた」と考えるのが自然なので、つい半過去にしたくなります。が、行為が続いた期間を明示する《per+時》があるので、ここは迷わず近過去 d) ha frequentato を選びましょう!
ちなみにc) frequentavaと答えた方が半数近くにのぼり、正解は3割にとどまりました。そのすぐ後に ha deciso di smettere と近過去があるので、同じ時制ではダメなのかな、と迷いが生じたかもしれませんが、poi でつないであれば、時間の流れにそってすべて近過去で表すことができるのです。
あわせて、 frequentare 「~に通う」が、“a”などの前置詞を必要としない他動詞であること、したがって《avere+pp.》となることもチェックしておきましょう。出題頻度の高い動詞のひとつです!