検定対策コラム
5級レベル筆記 正解への対策ポイント
- 白崎容子
- 元慶応義塾大学文学部教授Le Ali 23号
5級に挑戦なさる皆さん、検定へようこそ! 検定試験の問題は〈聴きとり〉と〈筆記〉で構成され、〈筆記〉はさらに1.文法、2.語彙、3.読解の3つのパートに分かれています。ここでは「文法」についての対策ポイントをいくつかあげてみます。
5級の文法項目は、冠詞、名詞、形容詞、所有形容詞の基本的な性数変化。動詞はessere、 avere、規則活用の-are・-ere・-ire動詞、andare、 venire、 fareなど使用頻度の高い不規則動詞の活用形と主な使い方、つまり、文法のテキストや参考書の最初の方にまとめて記載されている項目です。登場頻度の高いmi piace ~「私は~が好きです」などが、言い回しとして登場することもあります。
動詞活用形の正答率はいつもかなり高めです。大事な活用形を皆さんしっかりチェックしていらっしゃるのは頼もしいです。
でも、活用形だけ知っていても実際の会話にそのまま役立つとはかぎりません。動詞の前後を必要な言葉で補わないと、言いたいことを伝えられませんね。その際、なかなか一筋縄でいかないのが前置詞です。たとえば
1.Ciao Mamma, io 【1】[usco uscio esco]. Vado 【2】[a da in] cartoleria a comprare dei quaderni.
「じゃあね、お母さん、出かけるよ。文房具屋にノートを何冊か買いに行ってくる」
(40回 2015春季 正答率 N.31【1】74.4%、 N.32【2】24.4%)不規則動詞uscire の活用形 escoは高い正答率ですが、andare in cartoleria の前置詞 in には苦戦した方が多いようです。「~へ行く」の前置詞は a、da、inのいずれもありえます。andare da lui 「彼のところへ行く」のように次に「人」がくる場合は〈da〉と決まっていますが、悩ましいのは次が「場所」を表す名詞の場合。andare a scuola 「学校へ行く」もあれば、andare in piazza「広場へ行く」もあり、といった具合です。〈a 〉か〈in〉か…、cartoleria のように –eria で終わる名詞ならin pizzeria(ピッツァ店)、 in macelleria(肉屋)と in を使います。これを知っていれば迷わなくてすみますね。どうして a ではダメなの?と疑問が湧くのは当然ですが、ここで悩むよりもそのまま覚える方がはるかに効率的。たくさんの用例に接しながら、慣れていくのが一番です。たとえばこの問題文にも、ほかにandare a + 不定詞「~しに行く」の用法が含まれています。こうしたものが目についたら、その都度チェックしておきましょう。
前置詞はもちろん、動詞以外のものともセットになります。
2 Vado in Italia per lavoro due volte [un in all’] anno.
「私は仕事で年に2回イタリアに行きます」
(38回 2014春季N.44 正答率47.7%)半数近い方が正解しましたが、英語に引きずられると足を掬われかねない問題ですね。「1年につき」、イタリア語では 前置詞 a を使ってall'annoです。そしてこの問題文にもまた、andare in Italia、 per lavoro という前置詞のチェックポイントがあります。
前置詞の用法は多岐にわたるので、たとえば aとinは「~に」、 daは「~から」のように単純に意味を覚えるわけにはいきません。つねに前後の言葉と組み合わせて使い方を把握しておくことが大切です。たくさんの例文との出会いを心がけましょう。
さて、英語の知識が邪魔になりそうな例をあげましたが、次は、英語がプラスにもマイナスにも働く問題です。
3 Questa sera non 【1】[voglio vorrei ho voglia] di uscire. 【2】[Rimano Rimango Rimasto] a casa e 【3】[entro vado faccio] a letto presto.
「今晩私は出かけたくない。家にいて早く寝ます」
(39回 2014秋季 正答率N.47【1】31.0%、 N48【2】48.3%、 N49【3】 82.4%)【2】の不規則動詞 rimanere の活用形は半数近い方が、【3】にいたっては8割以上の方が正解しました。andare a lettoという語法を知らなかったとしても、英語の go to bedから類推できますね。一方、【1】の正解者は3割にとどまっています。「~したい」はvolereなので、 voglioまたは vorrei を選びたいところですが、不定詞 uscireの前の 前置詞 di が目障りです。イタリア語では、volere もpotere や dovere と同じように、直接、動詞の不定詞を従えます。volere diのように 前置詞 diをとることはありません。英語の 〈want to 不定詞〉とは違うのです。しかし、〈volere+不定詞〉と同義の 〈avere voglia di + 不定詞〉という語法があるので、そちらを使えば、di の居場所も確保できる、というわけです。
イタリア語の勉強に、英語などヨーロッパ言語の知識が役に立つことは間違いありません。しかし、それにあまり頼りすぎると思わぬ失敗をしかねません。イタリア語ならではの特色に馴染んでいきましょう。