検定対策コラム
「命令」を意味するだけではない“命令法”をマスターしよう(4・5級レベル)]
- Le Ali 33号
イタリア語の動詞の法(modo)の一つに、命令法(modo imperativo)があります。命令法と聞くと、なんだか難しい用法のように聞こえますが、実は実用イタリア語検定の入り口、5級でも出題されている用法です。命令法とは言いますが、「命令」だけに使用するのではなく、「依頼」「勧告」「勧誘」なども表わし、初心者レベルの皆さんも、初期の段階で学び、命令法と意識しないまま使用している用法です。
例えば、Andiamo al bar. を見てみましょう。
andiamoはandareの1人称複数だと分かりますね。「現在の習慣的動作」を示す直説法現在としての使用が考えられます。意味は「私たちはバールに行きます」です。
Ogni giorno andiamo al bar alle 7.
「毎日私たちは7時にバールに行きます」
とすれば、より直説法現在であることが明確になります。
しかし、直説法現在ではない場合があります。
以下は、第47回(2018年秋季)5級で出題された、リスニング問題、N6のスクリプトです。(正答率57.9%)
F: Su, Andrea, andiamo! Sennò perdiamo l'aereo.
M: Sì, subito... Non trovo la guida di Parigi... Qui in camera da letto non c'è... Ce l'hai tu?
F: No, io no... Guarda sul tavolo in soggiorno...
M: No, non c'è...
F: Eccola, Andrea, è qui, sulla sedia accanto alla porta d'ingresso. Dai, andiamo!
DOMANDA: Dov'è la guida di Parigi?
【訳】(女)ほら、アンドレーア、行きましょう! でないと私たち、飛行機に乗り遅れるわ。
(男)うん、今すぐ……パリのガイドブックが見つからないんだ……。ここの寝室にはない……君が持っているの?
(女)いいえ、私じゃないわ……。客間のテーブルの上をごらんなさいよ……。
(男)いいや、ないよ……。
(女)あったわ、アンドレーア、ここよ、玄関のドア横の椅子の上よ。さあ、行きましょう!
(問)パリのガイドブックはどこですか?
ここでは、1行目と下から2行目の andiamo が、直説法現在ではなく、命令法の「勧誘」を示しています。命令法では、1人称複数「noi」と2人称複数「voi」が、直説法現在のそれらと同じ形であるということもあり、文脈やイントネーション、会話の雰囲気などで、命令法なのか、直説法現在なのか判断しなければなりませんが、命令法は、文の終わりにしばしば感嘆符(punto esclamativo)「!」を記しますので、その場合はすぐに命令法と判断できるでしょう。感嘆符をつけずに、命令法として使う場合もありますが、上記のスクリプトの1行目の例文では、仮に感嘆符がなくても、文頭にsu「ほら、さあ」という呼びかけがあるので、この場合は命令法であることが明確です。
最後のandiamoも、文頭で、 dai「さあ」 と呼びかけているので、命令法であると分かります。このdaiは、英語でいうcome onのようなニュアンスがあり、命令法とセットで用いられることが多いです。
Dai smettila!「やめてくれ、いいかげんにしろ!」
smettilaはsmetterlaの2人称単数
Dai sbrigatevi!「さあ、(君たち)急いで!」
sbrigateviはsbrigarsiの2人称複数
Dai non prendertela!「そんなにくよくよ[気を悪く]すんなよ!」
prendertelaはprenderselaの2人称単数。否定を示す場合は、non+不定詞現在とします。
ちなみにこのdaiは、スポーツのシーンで監督やサポーターが選手を鼓舞するときによく使われます。
Dai corri!「さあ、走れ」
corriはcorrereの2人称単数。
さらに、上記の出題文には、もう一つ命令法の箇所があります。Guarda sul tavolo in soggiornoの guarda です。こちらは、まさに「命令」を示す命令法です。
また普段何気なく謝るときや呼びかけるときに使用している
scusare「許す」の scusa、scusi、scusate
sentire「聞く」の senti、senta、sentite
も実は命令法です。
Senta scusi, sa dove posso comprare un biglietto dell'autobus?
「あの、すみません。どこでバスのチケットを買えるか知っていますか?」
scusami、mi scusi、scusatemiなどのscusareの命令法の活用+miのように命令法と代名詞を組み合わせるとき、2人称単数・複数親称(tu/voi)は、代名詞が動詞の後ろに結合され、2人称単数敬称(Lei)は、代名詞が動詞の前に置かれ、こちらは結合されません。
再帰動詞の再帰代名詞の位置も、上記の代名詞と同様な位置となります。
alzarsi「起きる」
Alzati! Si alzi! Alzatevi!
最後に、Andiamo al bar.の説明に戻りますが、以上の説明からこの文は直説法現在の「私たちはバールに行きます」という意味だけでなく、「勧誘」を示す命令法の「(私たちは)バールに行こう」の2つの意味があることが分かります。このように、直説法現在なのか命令法なのかと意識せずに、文脈や会話の雰囲気などから理解できるようになったら、大きな前進です! ややこしい、文法事項が多いですが、 Non mollate mai! (決してあきらめないで!(これも命令法です!))