検定対策コラム
受験者が考える!実用イタリア語検定4級のツボ
- 土居 潤平
- 2022年秋期4級合格Le Ali 37号
ここでは私が受験した2022年秋期4級の問題から数問取り上げて試験を振り返り、4級合格を目指す上で大切なツボを考えていきたいと思います。4級の問題構成はリスニング、文法・語彙、長文読解の3本立てです。
◆リスニング編『会話の流れを掴んで得点奪取!』
私は初めて過去問で4級のリスニング問題を解いた時、読み上げの速さや語彙レベルにたじろぎました。そこで、試験当日までこの難関リスニングに力を入れて対策を進めました。4級では主に道案内や家族との会話などの日常生活の一場面が問題として出題されます。この回では、切符を購入する際の会話が出題されました。
N 15 (会話前半部割愛) 音声
F: Ah sì? Non lo sapevo... Vabbè, d’accordo, ecco, sono 70 euro.
M: Le devo dare... tre euro di resto.
DOMANDA: Quanto deve pagare la signora?
a) 47 euro b) 67 euro c) 70 euro
数字の聞き取りが苦手という方は私だけではないと思います。この問題では会話全体で複数回数字の発言がありましたが、特に解答の鍵となるのは上記の会話最終部分です。私は女性の発言70 ”settanta”と男性の発言3 ”tre”とを聞き取るのが精一杯でしたが、試験では会話の抑揚などを手掛かりに「きっとお釣りを返してるんだな」と当たりをつけて正答を選ぶことができました。
ポイントは、聞き取れた事柄を手掛かりにしつつ、自分だったら会話でどんな応答をするだろうか、ということを想像しながら聞いてみることだと思います。「お金を払ったら次はお釣りが返ってくるかな」など、話しの展開に見通しを持つことで、一語一句正確に聞き取れなくても会話の全体像を把握しやすくなります!
◆文法編『文法は仕組みを理解して得点源に!』
N 27
- Dov’è Michela?
- Mah, non so, mamma... ( ) studiando in camera sua.
a) Sta b) Starà c) È stata d) Essere
さてこの問題、時間軸は現在です。空欄の次がジェルンディオであることから、a)Sta を入れて現在進行形を作りたくなるところです。ところが、2番目の発話者である子どもはミケーラがどこにいるかを知りません。こうした場合、イタリア語では未来形を用いて現在の事柄を推量します。冷静に検討した結果、b) Staràで正解でした。
文法問題を攻略する上で必要な姿勢は「暗記」ではなく「理解」することだと私は感じます。イタリア語という言語が事象をどう捉え、表現するのかということについて、私たちは一度自分の先入観を捨ててこの言語に向き合わなくてはなりません。そのためには日頃からイタリア語を読んだり聞いたりするなかで、疑問に思ったことは文法書で謎を解き、楽しみながら理解を深めることが大切かと思います!
◆読解編『パラグラフごとに要点を押さえながら解いていこう!』
このパートでは長文を読み、提示された設問文の正誤(VERO/FALSO)を判断して解答します。過去にはイタリアの歌手ラウラ・パウジーニが取り上げられるなど、お題となる文章が趣深いです。私が受験した回はイギリス修学旅行の紀行文が出題され、単語数は400強でした。
過去問で初めて4級の長文問題を解いた時は分からない単語も多く、迷っているうちに時間がなくなってしまう、といった落とし穴にハマっていました。そこで私は何度も読み返すのはやめにして、必要に応じてパラグラフをメモ程度にまとめ、話しの筋を失わないように工夫しました。
N 59
正誤判断文:Con i padroni di casa ha dovuto parlare in inglese
(本文該当部分)Appena entrati nella loro casa abbiamo dovuto cominciare a parlare in inglese, a presentarci, a rispondere a un sacco di domande, a parlare di noi e della nostra vita.
原文
もし本文の細部まで分からなくても、「ホームステイ先での会話」についての手掛かりがこの文の後にも出てきます。私は実際の試験では「英語で会話」程度のメモを余白に書き、流れを失わずに読み進めていけました。また、先に問いを確認しておくのも有効ですね!
◆番外編『私が間違えた問題3選!』
N 37
- Che ( ) occhiali da sole!
- Ti piacciono?
a) bei b) belli c) bell’ d) begli
occhialiの意味は「眼鏡」です。注意を要するのは、レンズが2枚あることから常に複数形で用いられ、名詞を修飾する形容詞も複数形になる点です。この問題文では2行目の動詞が三人称複数形になっているのもヒントでした。私は語頭が母音の男性単数形名詞に接続するbell’と早とちりしたため、あえなく失点。形容詞belloが名詞の前に来ると指示代名詞quello、あるいは定冠詞loと同様の変化をします。さらに、この設問では語頭が母音の男性複数形名詞に接続することから、d) begliが正解でした。
N 43
Alla festa c’erano ( ) , …
a) tanta gente b) tante genti
c) tanta persona d) tante persone
私が解答したgenteはいわゆる集合名詞で、「人々」を意味し、単数形で用いられます。しかし、ここでは動詞が三人称複数形なので当てはまりません。d) tante persone が正解でした。
N 55
- Vuoi una mano?
- ( ) !
a) Altrettanto b) Magari c) Peccato d) Salute
「いつか使ってみたい!」と常々思っていた言葉なのに正答を選べませんでした(反省)。正解は「そうしてくれるといいんだけど」の意味で願望を表す間投詞の b) Magariでした。
◆最後に『私とイタリア語学習と実用イタリア語検定』
私も含め、比較的独習者が多いであろうイタリア語学習にあっては、殊に学習の初期段階は「暗い森」をひとりで歩いていくようなものかもしれません。教材を用意し、計画を立て、自分の意思で学び続けていかなくてはなりません。そんな私に学習の道標となって、暗闇に明かりを灯してくれる存在が実用イタリア語検定です。
検定問題に向き合って自分のレベルを知り、その壁を乗り越えるために試行錯誤を繰り返す。思うに、それは人生の縮図なのです。検定に挑戦する過程で得られた成功や失敗の経験は、きっといつか人生の様々な場面で役に立つと信じています。ややもすると孤独に陥りがちな言語学習。けれど、ちょうど芽吹いた草木がやがて蝶や小鳥たちを友と見い出すように、学習の先に待つ人々との出会いや新たな文化の発見、ひいてはイタリア語学習に向き合っている自分自身の存在の再認識は私たちに生きる勇気と希望を与えてくれるに違いありません。そうした新たな気づきや思考の深化が私にとって言語学習の楽しみであります。
人生を変えるきっかけ、それは普段の生活の身近なところに隠れています。まずはコンビニプリントでイタリア語検定の過去問を手に入れてみてはいかがでしょうか。皆様の好奇心が、今はまだ未知である広いイタリア語世界への扉を開く大きな一歩となることを願いつつ。
Passo dopo passo si va lontano.