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エッセー集 イタリア散歩道

「イタリア的なるもの。その歴史と日常から学ぶ」

楠田 正義
イタリア語検定協会理事Le Ali 16号

長い歴史と伝統と文化を誇る国イタリアを念頭に、現代イタリア人の気質に関する私の身近な印象を綴ってみると凡そ次の様になる。日本人の日常とは趣を異にすることが多いように思われる。忘却の彼方に追いやられた古き良き日本の伝統を顧みるには、このイタリアの人達の生き方は良き参考になるかも知れない。

  1. イタリアの人達は生まれ育った地域と風土が自分に一番適した居心地の良い場所だと確信している。郷土とその風景を愛する心が自然に備わっている。
  2. 都市の規模と構造が人間的であり芸術的である。自然の景観とアメニティーが優れている。郊外には昔ながらの田園風景が広がっている。
  3. イタリアの人達は個性豊かで創造性に富む。ファッションやワインは迎合するものではなく、自分の感性と好みに応じて選択するものであると信じている。
  4. 遍く道路には著名な人の名前がつけられ、歴史上の人物や出来事は常に顕彰されている。広場には歴史に名を残した人のモニュメントがあり、市民の憩いの場所となっている。
  5. イタリアの人達は歴史を継承し伝統と文化の保存に努めている。町全体を、歴史的建造物を不便を忍んで修復し保存する。古き良きものに価値が宿ることを終生肝に銘じている。
  6. 大量生産、大量消費型の経済を好まない。商品の均質性や生産の効率性そのものよりも、それに付加される色彩や形など感性に基づく新たな価値の創造を優先する。
  7. イタリアの人達は、偉大な政治家や企業家は偉大な文化人でなくてはならないとの信念を有している。自らに誇りを持ちその文化を継承し発展させる人を尊敬する。

源氏物語1000年記を終え、古事記編纂1300年を祝福している現在の日本、神話の時代を含めるとイタリアと同様に、あるいはそれ以上に歴史が古く、伝統と文化が間断なくかつ連綿と継承されて来ている。日本人がイタリアを学ぶと言うことは、自分自身をより良く、より深く知る機会になるものと思われる。それがイタリア人を真に尊敬する日本人の姿であると思う。

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