みんなの受験体験談
きっかけは「食」から
- 内藤 洋子
イタリア家庭料理教室 La Tavola Naturale
仙台日伊協会会員 - 2021年53回3級合格Le Ali 36号
イタリア語を学ぶきっかけは人それぞれ。私の場合はイタリアの人々とイタリア語で話したい、という思いから勉強を始めました。
イタリア語にたどり着くまでに、英会話学校に通ったことがあります。成果は、外国人苦手意識を克服できたことです。
次にフランス語を学ぼうとしましたが、数の数え方が私にとって理解することが難しく、脱落しました。そしてイタリア語を勉強するまでには、かなりの遠回りをしました。
私はもともと勉強が好きではないので、避けていたのかもしれません。
最初は、イタリア旅行を通じて、イタリアを知ることとなりました。参加したツアーは東北初のチャーター便で行くスタンダードなイタリア周遊旅行でした。
ミラノ、ヴェローナ、フィレンツェ、ローマ、ナポリの周遊旅行は、生涯忘れられない旅となりました。フィレンツェやナポリのラッシュアワーに遭遇し、バスの車窓から見るその光景は、とても興味深いものでした。大混雑する道を、仕事から家路につこうと、ルールを守らずに我先にと急ぐバイク。日本とのあまりに異なる交通事情に驚き、また、私にとってその光景がとても面白く映ったことが今でも新鮮に思い出されます。
イタリアをさらに深く知ることになったのは、「食」がきっかけでした。
有名なシェフや料理家の教室に通ったり、パルミジャーノ・レッジャーノ(パルメザンチーズ)のセミナーへ参加したり、美食の国イタリアをだんだんと知っていきました。
そのうちに自分の目、体でイタリアを感じたくなり、震災後の2012年に”Mi chiamo Yoko.(私の名前はヨウコです)”としか話せない程度の語学力でしたが、イタリアへの留学を決意しました。
留学先として決めたのは外国人に門戸を開いている大学があるペルージャでした。
私が入学した年は初級クラスの人数がとても多く、クラス編成はイタリア語が全く分からない人のクラスと、少しできる人に分けられました。私は全くできないクラスへ入ろうと思っていましたが、「ABCはできる」ということで、少し理解できる人のクラスに入ることになりました。クラスは10人弱の生徒で、アメリカのアラスカ、南アフリカ、ギリシャ、中国から来た人たちがいましたが、日本人は私一人でした。
私は英語ができませんし、クラスメイトに日本語の話せる人がいなかったので、頼れる人のいない環境での授業についていくことがとても大変でした。
けれど、後で考えるとこれが良かったのだと思います。
授業の休憩中は、英語のできない私と中国人のシオンくんと2人で動詞の活用を勉強しました。人生でこんなにも必死に勉強をしたことがあったかしら……。超初級から初中級に上がるまでは、本当に苦しかったです。
特に苦労したのは、日本語にない表現でした。なかなか理解できず、夢の中でも文法を考えていたほどです。イタリアに留学する前に基礎を固めていれば……と何度後悔したことでしょう。
そして、大学のテストの成績は、正直なところ、文章読解、作文で点数をかせいでいましたが、文法はまるでダメでした。それでも、今ではイタリア語の料理のレシピを読めるまでになりましたが……。イタリア留学中は食に関して色々なことを考えさせられました。ノンナ(おばあちゃん)は絶対に食べ物を粗末にしません。茹でたパスタ1本でも鍋に残しません。鍋をヘラなどでかき混ぜて底にパスタが残っていないか、念入りに確認して、きちんとすくい取ります。
その一方、若いマンマは残念ながら残ったパスタを捨ててしまったりすることがあるようです。
全員ではないでしょうけれど……。
私は留学当初からイタリアの郷土料理にとても興味を持っていました。昔の人はどのようなものを食べていたのかしら?
地域によってどのような違いがあるのか、知りたくて仕方がありませんでした。イタリアの郷土料理を知るために、専門書を読んだり、各地のノンナやマンマたちに料理を教えてもらいました。
そのうちに私はcucina povera(貧乏人の料理)に魅力を感じ始めました。料理に華やかさはないけれど、体が喜ぶ料理ではないかと思っています。
留学中にはイタリアの料理学校にも通っていたので、ペルージャの人気のレストランの厨房で1年ほど研修することができました。レストランのシェフはプーリャ出身の女性でした。マンマの料理と研修先のレストランの料理には「素材を引き出す調理方法」に共通点がありました。イタリアンと聞くと簡単で美味しいイメージを持たれている方が多いかと思いますが、簡単そうで実は難しい「素材が命」ということに気が付きました。イタリア留学をきっかけにして私の料理は変わりました。帰国後に私が作った料理を家族が食べて「イタリアに行った甲斐があったね」という言葉に、私の留学中の苦労が全て報われました。
実用イタリア語検定の勉強について、偉そうなことを言える立場ではありませんが、リスニングや文法の苦手な部分を理解し、一つ一つクリアしていきました。
それから過去問題集を何度も繰り返して勉強しました。試験の1週間前からイタリア語検定協会のe-ラーニングシステムを利用して過去問題を実践形式でやっていきました。
普段はNHKのラジオでイタリア語の勉強をしています。今の世の中はとても便利で、自宅でイタリアの映画を観ることができ、イタリアのラジオ番組もいつでも聴くことができます。
日本に居ながらイタリアを感じることが可能になりました。これからも楽しみながらイタリア語に触れていきたいと思います。
イタリア留学経験は、私の一生の宝ものです。
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イタリアの地方に伝わるマンマの味や手打ちパスタなど、伝統料理の魅力を体験してみてください!