みんなの受験体験談
30年…イタリアへの愛を再確認
- Hirao Yukiko
- 2023年57回準2級合格Le Ali 39号
昨年は私にとって、二つの願いが叶った年でした。一つはイタリア語検定の準2級に合格したこと。もう一つは長期のイタリア旅行を実現できたことです。
私とイタリアとの出会いは30年前。親戚との初めてのイタリア旅行で、歴史好きの私は、眼の前に広がる数々の世界遺産にすっかり魅了されました。また、片言のイタリア語にも耳を傾けて“Brava!”と言ってくださるイタリアの人々は、飾り気がなくとても素敵でした。それ以来、「イタリア語を学ぶ」、それが私の目標となりました。実用イタリア語検定に興味を持ち、まずは2004年に4級、翌年には3級を受験し、合格しました。それからもずっと勉強は続けていましたが、退職後の夢の長期旅行はコロナの影響で中止せざるを得ず、よしそれならもう一度、今度は準2級に挑戦しようと思い立ちました。2021年から受験し、横浜市の山手イタリア山庭園の麓にあるイタリア語教室Adagiettoで、先生の温かく熱心なご指導の下、記憶力の衰えを痛感し、挫けながらも、毎日コツコツと勉強を続けました。検定協会発行の過去問題集は、各年度の問題を何回も繰り返し、また、ascoltoの苦手な私は、問題集付属のCDやNHKのラジオ講座、スマホでRAI(イタリア放送協会)の放送で好みの番組をダウンロードして聴きました。作文も先生がさまざまなテーマを出題してくださり、丁寧に添削指導していただきました。(写真はアッピア街道。ローマへ!)
しかし、2021年秋の試験は体調を崩し欠席し、翌年秋、今回こそはと意気込んだのですが、ascoltoが4点足らずに不合格。意気消沈しました。でも、諦められずにもう1年と勉強を続け、2023年秋、ついに合格を手にしました。合格者一覧に自分の番号を目にした時は、本当に久々の感激でした。先生に報告すると、とても喜んでくださり、感謝の念で胸がいっぱいになりました。
そして6月には、もう一つの夢、1か月のイタリア旅行も実現できました。北・中部の10都市を列車で巡る旅です。重いスーツケースを引っ張りながら、高齢者の私と主人にとって、思っていたよりも結構過酷な旅となりました。けれども、「長年行きたいと願っていたあの街に行ける!」という思いが歩みを進ませました。ボルゲーゼ美術館、エトルリア美術のヴィッラ・ジューリア国立博物館、アッピア街道の敷石、中世の面影を残すスポレート、サン・フランチェスコ教会での神父様の説教、友人に連れて行ってもらったアオスタの山並み、ピサの斜塔、トリーノのクラシックなカフェ、ひなびた風情のトルチェッロ島、ゲットーのたたずまい、トリエステの坂道(本当にきつい坂でした)。ここに書き尽くせませんが、全て心に刻みました。実は旅を始めて10日目にバスから降りる際、ひざを捻ってしまい、フィレンツェの大学病院にイタリア在住の保険会社の女性の付き添いで受診するというハプニングに見舞われました。何でここまで来て!? とがっかりするやら腹が立つやら……。でも、痛み止めを飲みながら、主人がghiaccio(氷)をホテルに着く度にフロントで頼み、薬局で湿布を買って来てくれたり、どうにかこうにか旅を続けることはできましたが、ピサの斜塔も、シェーナのマンジャの塔にも上れませんでした。Che peccato!!(写真はウンブリア州ペルージャ県 スポレートの美しい路地)
そんな残念なこともありましたが、この旅の中で、心温まるイタリアの方との触れ合あいがありました。それは列車移動の駅のホームでのこと。イタリアの駅のホームにはほとんどエレベーターがありません。重いスーツケースをホームの階段でゴトゴトと降ろし、地下道を歩き、またそれを隣のホームに引っ張り上げる。早めに目的のホームに着いて列車を待っていても、急にホームが変更になり、大慌てで再びゴトゴトとやるわけです。でもそんな時、心優しい青年が、私たちのスーツケースを上まで持ち運んでくれました。本当にありがたかったです。そして、そんなことが度々起こり、アッシージでは、sorella(シスター)までもが手伝ってくださったのです! 列車の中での荷物棚への上げ下げも、「困っている人を助けるのは当たり前でしょ?」とでも言うように自然に手助けしてくださるのです。私はすっかり感激してしまいました。日本だったらどうでしょうか? 同じことが果たして起こるでしょうか? このことは今も深く心に残っています。(写真はローマのボルゲーゼ美術館 ルネサンス・バロック美術の作品を所蔵)
さらに一つ、これは楽しい思い出なのですが、フィレンツェのホテルでのエピソードです。朝食担当のホテルマンは、感じの良い青年でした。チェックアウトの朝、彼は前日のお酒が残っていたようで、フロントで私は思わず“Non bere troppo!”と口走ってしまいました。同僚たちは爆笑! ばつの悪そうな彼の顔。「あまり飲みすぎないで」と軽く言ったつもりだったのですが、意外な反応に心臓はバクバク。でも、なんだか嬉しい出来事でした。(写真はヴェネーツィアのトルチェッロ島にあるサンタ・フォスカ教会。12世紀創建)
言葉は通じたのか? いえいえ、やはり片言です。それでも、何気ない一言二言のやり取りがとっても楽しかったのです!
イタリア語は、私にとって美しい憧れの言葉ですが、とても奥深く、これで良いという風には決して行きません。しかし、これからも、ずっとずっと学び続けたいと思っています。